縮小の傾向にある貸金業界の市場規模。その背景を解説致します。

貸金業は概して利益率の高い分野です。
そのため、一般的にも「儲かる」「景気が良い」というイメージが定着しています。
しかし、実際に貸金業にそのような実態があるのかということはあまり知られていません。
そこで、今回は貸金業界の市場規模について取り上げていきたいと思います。

 

金融業界の動向

貸金業の景気は?

 

貸金業というのは、当然ながら金融業界の一部です。
そこで、まずは簡単に近年の金融業界の動向について触れておきたいと思います。
金融業界の市場規模は、平成17年から19年までは拡大、19年から21年にかけては縮小、21年から26年にかけては再び拡大、27年からは再び縮小といった推移をたどっています。
つまり簡単にまとめると、近年は右肩上がりでも右肩下がりでもなく、山あり谷ありの状態が続いているということになります。
ちなみに、平成27年~28年の業界全体の市場規模(主要対象企業197社の経常収益の合計)は60兆5125億円となっています。

 

 

貸金業界の市場規模

次に今回の本題である貸金業界の市場規模についてですが、こちらは金融業界全体と違って山あり谷ありの状況とはなっていません。
結論から言ってしまうと、貸金業界の市場規模は縮小が続いています。
まず貸金業者の数についてですが、これは1999年以降一貫して減少し続けています。
この背景には統廃合による影響もありますが、中小業者の倒産の方がより大きな要因となっています。

 

貸金業界の市場規模を計算

 

数字で言うと、2000年代初頭に3万を超えていたものが、2016年の時点で約2000業者にまで減少しています。
つまり、2000年と比べて1割以下にまで減少したということになります。
次に貸付残高についてですが、こちらも2004年以降一貫して減少しています。
しかも、貸金業者数とは違って大幅に減少しています。
この背景には、貸金業者による悪質な債権回収や多重債務問題がありました。

 

 

こうした問題に注目が集まることで貸金業者に対する非難が高まり、さらには貸金業界に対する規制が強化されたことによって、貸付残高が大幅に減少することになったのです。
具体的な数字で言うと、2004年を境に大幅に減少し2008年に10兆円を割り込み、2016年の時点では2兆6540億円にまで減少しています。
2007年から2016年までの10年間の年平均残高変化率は-13.8%ですから、どれだけ急激に減ってきたかが分かります。
尚、貸付残高はピークに比べて20%程度に縮小していることが分かっています。
近年はこの傾向に多少歯止めが掛かっていますが、かつてとは程遠い状況にあることは全く変わりません。

 

 

市場縮小の背景

貸金業市場縮小の画像

 

上記のような貸金業界の市場縮小が起こった背景にあるのは、2006年の貸金業法の改正です。
この改正によっていわゆるグレーゾーン金利が廃止され、貸金業者は大打撃を受けることになりました。
改正前は29.2%だった上限金利が15〜20%へ引き下げられたことで、先述した通りの状況となってしまったのです。